環境学研究所、持続可能性、持続可能な発展、サステイナビリティーの研究・教育、藤平和俊

持続可能な住宅研究

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持続可能な住宅設計のための2段階の準備作業

持続可能な住宅研究では、まず、「持続可能な住宅設計のための2段階の準備作業」を行いました。この場合、第1段階は「基準となる住宅と持続可能な発展との関係を特定」、第2段階は「対象となる住宅の持続可能性診断」となります。

第1段階では、まず、住宅を「物質的要素(構造躯体・外装・開口部・内装・配管など)」と「空間的要素(部屋やエリア)」の複合体と捉えた上で、住宅の重要な要素を特定しました。その上で、「制御系の設計研究」の「持続可能なデザインのための準備作業」に示した方法で、各要素の変数とその目標値を設定しました。

 

持続可能な住宅を普及促進するための制御系

「持続可能な発展のための基本制御系」および「持続可能な住宅設計のための2段階の準備作業」を応用して、『持続可能な住宅を普及促進するための制御系』(図1)を策定しました。

この制御系において、「持続可能な住宅設計指針」と「持続可能性チェックリスト」は、「持続可能な住宅設計のための2段階の準備作業」の第1・第2段階からそれぞれ導いたものです。「設計関係者」としては、住宅オーナー、デザイナー、建築家、住宅施工者などが想定されます。また、「制御対象」の中には、「新築住宅」と「既存住宅」の両方が含まれます。以下、新築住宅と既存住宅のそれぞれについて、「設計指針」と「チェックリスト」の使い方を示します。

 

(1)新築住宅の場合

対象が新築住宅の場合、目標値に関する情報は「持続可能な住宅設計指針」を介して設計関係者に届きます。設計関係者は、住宅の各「要素(部位)」の「変数(項目)」ができる限り目標値に達するように、設計図書を作成します。設計過程の重要な段階では、「持続可能性チェックリスト」を用いて、設計図書をチェックします。また、住宅の工事完成後は、やはり「持続可能性チェックリスト」を用いて完成住宅の持続可能性を評価することができます。

 

(2)既存住宅の場合

対象が既存住宅の場合、一連の流れは、対象となる住宅の“インスペクション”から始まります。設計関係者は、各要素(部位)の変数(項目)の状況を調べて、「持続可能性チェックリスト」の「測定・推定値」欄に記入します。次いで、測定・推定値を目標値と比べて、比較結果を評価欄に記入します。測定・推定値が目標値に達していれば“○”、達していなければ“×”といった具合に記入します。ここで、“×”のついた変数(項目)が制御変数になります。

インスペクション実施後、通常、設計関係者は、制御変数(×印のついた項目)が目標値に達するように、改善のための設計図書を作成します。たとえば、開口部(窓・出入口)の断熱性能が低くて目標値を下回っている場合、目標値を達成できるように開口部の改修を設計に含めるわけです。ただし、改修項目が非常に多い・技術的に困難・費用がかかり過ぎる、といったような場合には、既存住宅を改善する代わりに、改築(建てかえ)が選択されることもあります。

改修設計または改築設計の重要な段階では、新築住宅の場合と同様、「持続可能性チェックリスト」を用いて、設計図書をチェックします。さらに、改修または改築工事後は、「持続可能性チェックリスト」を用いて工事完了後の住宅の持続可能性を評価することができます。

本手法の主要な特長

本手法の第1の特色は、「持続可能な住宅の普及促進過程」全体の可視化です。図1は、新築住宅と既存住宅の両方を対象にして、設計指針とチェックリストを用いた持続可能なデザインの普及過程を簡潔に表現しています。この視覚化によって、持続可能な住宅の普及促進過程の包括的な理解が容易になることが期待されます。

第2の特長は「使いやすさ」です。「持続可能な住宅設計指針」と「持続可能性チェックリスト」にある要素は、住宅の物質的あるいは空間的な部位に相当します。そのため、設計・チェック・評価・インスペクションの各過程で、設計図面や現実の住宅と容易に照合することができます。

第3の特長は、地域的な差異や状況変化に対する適合性・順応性です。設計指針やチェックリストにある「要素(部位)― 変数(項目)― 目標値」という構成は、もともと地域差や状況変化に適合・順応させやすい性質をもっています。たとえば、要素(部位)が「構造躯体」の場合、地震地帯であれば「耐震性能」、強風地域であれば「耐風性能」、豪雪地帯であれば「耐積雪性能」を変数(項目)として選択し、必要な耐震・耐風・耐積雪性能に応じて目標値を設定することで、地域特性に対応できます。同様に、気候変動の深刻化や人口高齢化のような状況変化にも柔軟に対応します。そのため、設計指針やチェックリストを容易に作成・改訂することができるわけです。

 

関連著書

Sustainable Home Design by Applying Control Science

著者:藤平和俊 / 出版社:InTech / 2017年12月刊行

第4章
Methodology of Applying Control Science to Sustainable Housing Design
第6章
Discussion and Conclusion: Effectiveness, Characteristics and Future Prospects of the Methodology

 

Complex Systems, Sustainability and Innovation

編集:Thomas, C./ 出版社:InTech / 2016年12月刊行
[所収論文] 著者:藤平和俊

System Control for Sustainability: Application to Building Design

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