環境学研究所、持続可能性、持続可能な発展、サステイナビリティーの研究・教育、藤平和俊

稲城エコガーデン

環境学研究所 >> 稲城エコガーデン

稲城エコガーデンは、稲城エコハウスを取り囲むエクステリア・スペースのことです。けっして広くないスペースですが、随所に持続可能性のためのさまざまな配慮や工夫をしています。

稲城エコガーデンの第1の特色は、開放的で見通しの良い「オープン・エクステリア」形式を採用していることです。プライバシーへの配慮が必要なベランダ周囲を除くと、フェンスや門扉類は一切設けていません。

また、敷地内に駐車スペースがないことも特色の1つです。稲城エコハウス・エコガーデンは、鉄道の駅から比較的近く、マイカーをとくに必要としません。背景には、住人がクルマよりも歩く生活を好んでいて、それに適した住所を選んだということがあります。そのため、駐車スペースの代わりに緑地スペースをより広くとることができました。

家庭菜園:食と水の循環

エコハウスの東側、建物の近くは「家庭菜園」にしています。例年、ナス、ピーマン、エダマメ、ミニトマトなど数種類の野菜を栽培しています。この菜園では食と水の循環に配慮しています。

肥料は、台所から出る生ゴミをコンポスター内で分解した堆肥を用いています。菜園のすぐ隣に置かれたコンポスターは、「バクテリアdeキエーロ」と呼ばれるタイプです。神奈川県の葉山町在住の方によって考案され、葉山町やその近隣の逗子市、鎌倉市などでは広く活用されているそうです。太陽光と風が適度に通り抜ける構造で、土中に埋めた生ゴミは微生物によって分解されます。使用開始以来、臭気などのトラブルは全く起こっていません。堆肥を用いた栽培植物の成長も順調です。

植物への散水は、雨水タンクに貯留した天水を用いています。雨水タンク内の水は、災害発生時には非常用水になるので安心です。また、建物屋根を含めて敷地内に降った雨水は、最終的にはほとんどすべて地中に浸透していきます。これは、自然の水循環に近い水の動きです。

多様な植物と自然風の庭づくり

家庭菜園を囲むように、さまざまな種類の樹木や草本類を植えています。植物を選ぶときには自然の植生に近づけるように配慮しました。外来種はできる限り避けて、この地域に自生するような在来種を中心に植えています。ユズやキンカンなどの果樹もあり、野鳥も数多く訪れます。

植栽スペースは、エコハウスの北側も道路に沿って続いています。西側のアプローチの脇にも帯状に植栽しています。フェンスなどの遮るものがないため、道路からも植栽はよく見えます。そのため、近隣の人や道行く人と植物をきっかけにして会話が始まることもあります。

南側スペース:植栽とフェンスでつくる持続可能な空間

エコハウス・階段室の南側、スロープとベランダの間にある植栽スペースには、シンボルツリーとしてアオダモを植えています。落葉樹のアオダモは、自然のサイクルで階段室の窓から入る日射を調整します。葉が茂る夏は強い日差しを遮り、葉を落とす冬は日差しが屋内に入って空気を暖めます。

ベランダ周囲は、フェンスと植栽を組み合わせることで快適性や安全性、環境保全などに配慮しています。アルミ製のフェンスは、前面道路を通行する人々の視線を適度に遮ります。そのため、住宅側のプライバシーを保護しつつも、不審者がベランダに隠れることも防ぎます。風もフェンスを通り抜けるため、夏場の通風も良好です。なお、フェンスの高さは180 cmありますが、屋内の床レベルは道路よりも50 cmほど高いため、ベランダに立つと近隣の人と普通に会話もできます。
フェンスの下も緑地帯にして地被植物を植えています。フェンスと平行してベランダ側には中木も植えています。植物があると、水の蒸散によって夏の暑さを和らげます。都市部の気温上昇(ヒートアイランド現象)の緩和にもつながります。

関連著書

Sustainable Home Design by Applying Control Science

著者:藤平和俊 / 出版社:InTech / 2017年12月刊行

第5章
Case Study: Detached House Designed by Following the Control System

▲ページトップに戻る