環境学研究所、持続可能性、持続可能な発展、サステイナビリティーの研究・教育、藤平和俊

持続可能な都市研究

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持続可能な都市を計画する方法

持続可能な住宅研究で培った方法を応用して、「持続可能な都市」の研究を進めています。

図1に「持続可能な都市設計指針」の作成・改訂手順を示しました。図の中央列は、設計指針を準備・使用する流れを示しています。まず、システム設計者が、3段階の手順を経て、持続可能な都市設計指針を作成あるいは改訂します。また、設計指針に基づいて「持続可能性チェックリスト」も準備します。続いて、システム利用者が設計指針・チェックリストを活用します。最後に、それらを活用して出来上がった都市が利用されます。

左列の4つのブロックは、設計指針を作成・改訂する際に参照する項目を示しています。一方、右下の2つのブロックは、システム利用者および都市利用者からのフィードバックを、設計指針の改訂に反映していく経路です。

「持続可能な都市設計指針」を作成する手順は、(1) 都市に関連する環境・社会・経済問題の特定、(2) 持続可能な都市設計への要求の特定、(3) 持続可能な都市設計指針の要素・変数・目標値の特定、の3段階で構成されます。

1.都市に関連する環境・社会・経済問題
システム設計者は、まず、都市に関連する環境・社会・経済問題を特定して都市関連問題群リストを作成します。たとえば、都市スプロール、環境破壊、生物多様性の損失、廃棄物、交通渋滞、環境汚染、地球温暖化、気候変動、経済不振、犯罪などが問題として特定されます。

2.持続可能な都市設計への要求
第2段階では、第1段階で特定した問題に基づいて「持続可能な都市設計への要求」を特定します。たとえば、問題が「交通渋滞」であれば、通常、「自動車交通から大量輸送機関への転換」や「徒歩や自転車利用の促進」が要求として特定されます。

3.持続可能な都市設計指針の要素・変数・目標値
第3段階では、持続可能な都市設計への要求を「持続可能な都市設計指針」にある「要素-変数-目標値」に変換します。この変換によって、都市のどこをどのように設計するかを明示することができ、実践的な世界で使いやすくなります。

なお、都市全体の設計では、建築物のような都市構成要素の設計とは異なり、広域の空間計画が必要です。そのため都市設計指針作成の第3段階は、図1に示すように、(1)開発許容地域、(2)都市構成要素間の空間的関係、(3)都市構成要素の設計原則、という3つのステップで構成されます。

(1) 開発許容地域

ステップ1では、土地開発と自然特性との関係に注目します。図2に示すように、自治体領域を開発制限地域と開発許容地域に分けます。ここで「開発許容地域」とは、土地開発を許可しうる地域という意味です。

表1の左に示すように、ステップ1の要素を「開発許容地域」としました。そのうえで、「生物多様性損失のリスク」「自然災害のリスク」「地形の傾斜度」という3つの変数と、それぞれの目標値を特定しました。開発許容地域の範囲を定めるときには、3つの変数がすべて目標値を満たすエリアを選定します。言い換えれば、生物多様性にとって重要なエリア、洪水や土砂災害などの自然災害リスクの高いエリア、および急傾斜地は、いずれも開発許容地域から除外するようにします。

表1 持続可能な都市設計指針 [1] 開発許容地域(要点)

要素

変数

目標値

開発許容地域

生物多様性損失のリスク

低い生物多様性損失リスク

自然災害のリスク

自然災害のリスク

地形の傾斜度

平坦または緩やかな傾斜

(2) 都市構成要素間の空間的関係

ステップ2では、土地開発の場所や各種施設の配置に注目します。土地開発の場所は、開発許容地域の中に限定されます。また土地開発の場所は、図2に示すように、居住・サービス区域、工場・プラント区域、第一次産業区域に分けられます。「居住・サービス区域」内には、居住やサービスのための建築物、街路、公園などが配置されます。「工場・プラント区域」には、大規模な工場や発電所などが含まれます。「第一次産業区域」に含まれるのは、農地や植林地です。また、都市構成要素としては、都市間および都市内の輸送用施設も重要です。図2には、それらを旅客輸送と貨物輸送に分けて示しています。

上記のような基本的な配置を基に、本ステップでは、持続可能な都市構成要素間の空間的関係を提示します。まず、上に示したような区域や主要施設類を要素として選定します。次いで、持続可能な都市設計への要求を満たせるように、変数と目標値を設定します。1つだけ例を挙げると、「居住・サービス区域」の「範囲」は「旅客輸送の停車駅から徒歩圏内」のように、要素・変数・目標値をそれぞれ設定するわけです。

(3) 都市構成要素の設計原則

ステップ3では、各種都市構成要素の設計原則を示します。まず、主要な都市構成要素を要素として選定します。続いて、要素ごとに持続可能性に強く影響する事項を変数とします。さらに、それらの目標値も設定します。たとえば、「住宅地の街路」を要素とすると、その「通行」を「歩行者・自転車・居住者のための車両に限定」のように変数と目標値をそれぞれ設定するわけです。

関連出版物

How to Design Sustainable Structures

Fujihira K. IntechOpen; 2020. DOI: 10.5772/intechopen.95012

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